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「論語と算盤」を読んで
今回はそんな渋沢栄一が記した「論語と算盤」を読んで考えたことを書かせていただきます。この本の中では「論語と算盤」の論語とは、人間性・人格の磨き方、人との付き合い方を学ぶものだとし、算盤は科学技術を学び、会社の価値を高め、生活を豊かにすることとして書いています。
この本が執筆されたのは大正7年。大正時代は激動の幕末明治を経て産業が発展し、ある程度安定した時代、一部では大正ロマンとも言われるように伝統と近代化の織り交じった独特の雰囲気が漂う時代です。渋沢栄一は「時代が変わっても変化しない人間と人間社会の本質」をこの本で描きました。
現在(当時の大正時代)は教育や知識を身につけることを重視した結果、精神を磨くことをなおざりにし、心の滋養がなく、精神の脆い青年たちが育っている。なんとなく学問をした結果、社会に出てから「自分は何のために学んできたのか」という疑問を持つ。そんな青年が少なくないと嘆いています。
つまり渋沢栄一は、論語から人格形成を学び、資本主義の利益主義一辺倒にならず、バランスを取ることが大切と考えます。渋沢が幼少であった幕末では、武士が借金を踏み倒す現実を見て、武士が例え論語で人格を磨いても経済が回らなければ社会が豊かにならないことを知り、明治後期になると子どもの頃に論語を学ばず西洋の科学技術のみを学び、資本主義のお金儲けばかりを優先する人間が育成されている姿を見た。心が豊かでなければ社会も豊かにならないのだ、と。
私は、「論語と算盤」の題は、明治維新後の論語を学んだ渋沢栄一等の世代が西洋の科学技術と資本主義を学び、論語(人格形成)と算盤(利益の追求)という2つの要素をバランスよく用いることが、会社の成長にとって最も大切であると伝えたいのだと理解しました。
この著書は青年の生き方に寄り添って書かれており、現代語に多く訳され漫画化もされていてとても読みやすく、お勧めの本です。元日本ハム栗山監督も選手たちに配って読ませたことでも有名で、大谷翔平の愛読書になっているそうです。ぜひご一読ください。
私は、公認会計士試験に受かってから40年近くになります。その間、会社の監査では多くの企業を担当し、企業の発展の歴史を見る事ができました。合格初期はバブルを迎える少し前、まだ全ての企業が右肩上がりに成長していた訳ではなく、苦戦しているところも多く、経済は「まだら模様」の状況でありました。
私が担当した当時売上1兆円という総合消費会社では、初めて達成し飛ぶ鳥を落とす勢いであったにも関わらず、その後他社の傘下に入って経営の立て直しをしているようなところがあります。一方、その時は眼鏡メーカーだった企業が、精密機械を扱うようになって発展し、株価が当時の20倍以上になる等、現在も様々な浮沈を繰り返し、まさに生き残りをかけて戦っている企業を数多く見てきました。最近でも、コロナ禍により一気に需要が低迷し、必死に業態転換を図りながら生きている企業もあります。
企業の発展は利潤追求を最優先としたために、1970年代は公害問題も多発し環境への配慮は二の次になった歴史がありました。今日の温室効果ガスの影響でも気候変動から環境破壊に繋がっています。待ったなしの対策は各国に訴えられ、2050年までにカーボンニュートラル宣言に賛同した国や地域は、123か国1地域となりました。日本も昨年の国会で決議しています。さらに「誰一人取り残さない」持続可能でより良い社会の実現を目指すSDGsは、世界共通の目標です。各企業の取組みの可視化が求められるようになりました。
現代の企業の発展状況は、渋沢栄一が見たら喜ぶだろうと思う反面、金儲け主義を追求した結果、環境問題により人類の生存を脅かしかねない状況にあることについては嘆いているかもしれません。「論語と算盤」は明治後期から大正時代の様子を目にして書いていますが、警鐘は、奇しくも合致しているように思えてなりません。
論語は「人間がよりよく生きるにはどうしたらよいか」「より心豊かに生きるにはどうしたらよいか」を教えてくれます。道徳だけでは解決できない問題もこれから多々ありますが、私たちは常に世界の平和と安定を念頭に置きながら、企業の発展を担って経営のかじ取りをしないといけないと感じた次第です。
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