きっかけは、弊社が以前開発支援をしたお客様からの紹介でした。従来の物流センター内で稼働しているWMSシステムの一新にあたり、「稼働当初から在庫も発送量も大きく増え、また全国複数の物流センターが連携するようになった状況にも合わせた最適でこの先も安心して利用できるWMSシステムを再構築したい」というオーダーをいただき、全体構想のヒアリングに伺いました。
そこには、競合他社に相談してもなかなか折り合いがつかず、ITベンダへの不信感を持ち始めている担当者の方がいました。開口一番、「何をしに来たのですか?」と一言。マイナスからのスタート。そんなプロジェクトでした。今振り返ると、担当者の方にも不本意ながら担うことになってしまった大きなプレッシャーがあったのだろうと思います。
そんな形でスタートしたプロジェクトは、現在のシステム状況を確認するのも一苦労でした。最初は担当者の方に距離を置かれ、うまくコミュニケーションがとれない中で雑談などから情報をひとつずつ拾い仮説を立て、リプレース案をいくつかまとめていきます。そうすると、トライ&エラーの中で少しずつ「そうじゃない」「ここはこうしてほしい」「この観点は必須」とリクエストや指摘をいただけるようになっていきました。
社員旅行で社内メンバーと交流
このプロジェクトを推進するにあたり一番の懸念は、クラウドによるネットワークレスポンスの低下でした。物流センターで稼働するシステムとして、注文から出荷までのレスポンスが落ちてしまうことは売上の低下に直結し、許容できません。この部分は早期に検証環境を準備し、実測ベースで低下しないレスポンスのエビデンスを見せることで安心感を持っていただき、最終的に、今後の業務量や売上予測の変化にスピード感を持ってスケールアップができ、また数年後の大規模リプレースを心配せずに済むクラウドベースのリプレースに方針が決まりました。
また、試行錯誤したプロジェクト計画書を私から関係者に説明していく中で徐々に知識や努力を認めていただき、信頼を得ていくことができました。この、検証を重ねチームとしての形ができていく過程は風向きの変化を確かに実感でき、コツコツあきらめずに取り組んだことを認めてもらえだした、とてもやりがいを感じた期間でした。そのままチームは成熟し、移行時には約20名のチームで無事にクラウド化を実現することができました。
社員旅行で社内メンバーと交流
このプロジェクトの中で主に私は、プロジェクトマネージャとしてプロジェクト全体のグランドデザイン、スケジュールや課題の管理・調整、予算感のコントロールに加え実務としてインフラ環境の設計・構築、移行の計画策定などを担当していました。
無事に移行が完了し、離任する際にはお客さまから「当初相談していた他社に比べて、期間も1/2、コストも1/2、トータル1/4の費用で無事に移行が完了できた。『これぞプロジェクトマネージャ』という仕事を見せていただきました。ありがとう」との嬉しいお言葉をいただけ、マイナスからのスタートだっただけに印象深いプロジェクトになりました。今でも、懇親会などに声をかけていただける関係が続いています。
引き続き、多くのプロジェクトを担当していますがあの時の感動をもう一度と、大変なプロジェクトでも正面から向き合って業務を進めています。